「こんなところで寝やがって・・・」



シドは呆れたように言いながら武道場の隅で座ったまま眠った梨乃の前に座り込んだ。
あどけない寝顔で眠る梨乃をまっすぐ見つめる。

どうしてそこまで頑張るのだろうかと。




「このような場所でプリンセスを寝かせるわけにはいきません。部屋の方へ」

「・・・俺が運ぶ」



クロウの言葉に、シドは梨乃の背中とひざ裏に手を差し入れ抱上げた。




「・・・ん・・・」



揺れに身じろいだ梨乃に視線を移すが、起きた様子はない。
シドはゆっくり歩き出した。



「あなたはすっかり、プリンセスの虜といったところですか」

「そんなんじゃねぇよ」

「あなたが、そこまで人に固執するとは驚きですよ」




クロウはそう話しながら、シドの後に続く。
シドはその言葉に返事をすることなくしっかりした足取りで歩いて行く。