「梨乃さま、この方にはこの薬を塗ったうえでガーゼを当て、包帯を巻いてください」

「はい」



今はプリンセスと呼ぶのをやめてもらった梨乃は、言われたとおり受け取った薬を傷口に塗り込んでいく。
染みるのか顔を顰めた騎士に声をかけながら手当てを進めていった。




「・・・お前、何してんだ!」




突然聞こえた声に梨乃が立ち上がる。
シドが肩をいからせながら立っていた。


「あ、シド・・・」

「なんでお前がこんなことしてんだよ!お前、倒れたんだぞ!」

「でも、もう大丈夫だから。今、私にできることがしたくて」



そう言って笑った梨乃に、シドは胸を痛める。
真実を聞いた今、その笑顔の裏にある悲しみが見えるようだった。




「お前・・・」

「指示された手当くらいなら私にもできるから」

「プリンセス・・・」

「クロウ、ごめんね。プリンセスとして相応しくないかもしれないけど、今だけはプリンセスの肩書をおろしてもいいかな?」




梨乃の頼みに、クロウは首を横に振ることはできなかった。