「それでは、プリンセス。国王様も、ここにいて下さい」
「えっ、クロウは?」
「私は扉の前におります」
「どうして・・・」
クロウは中に入って来ず、すぐに踵を返そうとする。
それを梨乃が引き止めた。
「私には、プリンセスをお守りする役目がありますので」
「そんな」
「大丈夫ですよ。この城まで来ることはないはずですから」
そんな心配をしているわけではないのに。
梨乃はそれ以上言葉をつなげられないまま、バタンと扉は閉められた。
不安で不安で仕方がない。
この今の瞬間さえ、騎士たちは争いあっている。
今まで感じたことのない不安がこみ上げてくる。
「落ち着け」
「シド・・・」
「側に、いてやるから」
シドにそう言われ、梨乃は深呼吸をして頷いた。