「それは、よかったです」

「でも、これが現実になっていくんだね」

「はい?」

「今回は、なんだか夢の世界みたいで。やっぱりどこか現実味がなくて・・・。でも、これが私の世界で、私の日常になっていく」




梨乃の視線が窓の外に向かい、どこか遠くを眺めるようなはかなげな表情に変わる。
コロコロと変わる表情に、クロウはついていけない。

自分の故郷を思い返しているのか、梨乃の表情は切なげで。
もう戻ることのできない世界を嘆いているのだろうか。



「プリンセス・・・」

「なんて。いつまでもイジイジしてたらダメだよね」



そう笑って言うから、クロウの胸は締め付けられる思い。
どうしてそう無理して笑うのだろうか。
また溜めこんで、爆発してしまうのではないか。



「プリンセス。無理して笑わなくていいんですよ」

「クロウ・・・」

「泣きたい時には泣いてください。そして、笑いたくなったら笑ってください。私の前で、無理する必要なんてないんです」




何度でもそう言おう。
梨乃が自分を信じてくれるまで。
頼って寄りかかってくれるまで。

あなたの側にいます。
あなたの支えになります。



何度だってそう言おう。