「一曲なんてあっという間だ。もっと、プリンセスと踊っていたかったのに」
「ありがとうございます。私も、とても楽しかったです」
曲が終わり体が離れる。
梨乃は照れ臭そうに顔を俯かせた。
そんな梨乃をレノンはクスクスと笑って見つめる。
「とても可愛らしいプリンセスだ」
「え・・・」
「もっと、一人占めしていたかったな」
レノンはそう言うと梨乃の頬に手を触れ、微笑んだ。
梨乃の頬は見る見るうちに赤く染まっていく。
「ではプリンセス。またの機会に」
恭しく礼をするとレノンは人の波の中に消えていった。
慣れているんだろう。
言動のすべてがスマートすぎて、慣れない梨乃は戸惑いしかない。
戸惑いの中、次の曲が始まり、他の人からのダンスの誘いを受けていく。