フロアに音楽が鳴り始める。
ダンスの始まりをつける音楽。
「プリンセス、一曲ご一緒願えますか?」
「あ・・・」
梨乃の前に手が差し出され顔をあげると、金髪のとても優しい表情の男性。
「シルスタ国王子、レノン=カーリバルと申します」
「梨乃です」
梨乃はためらいがちにそっと差し出された手に手を重ねる。
レノンは優しく微笑むと梨乃の腰にそっと手を添えた。
クロウ以外の人との初めてのダンスに、梨乃は頬を染める。
流れ始めた音楽に乗せてレノンが動き出す。
梨乃はクロウとの練習を思い出しながら動く。
「あっ、・・・ご、ごめんなさい」
足がつんのめりバランスを崩しかけたのをレノンはさりげなく自然にエスコートし立て直す。
「楽しみましょう。プリンセス。少しくらいステップが違っても、楽しめばいいんです」
「レノンさま・・・」
「なんて、こんな事言ったら叱られますかね」
優しい表情を浮かべ笑うレノンに、梨乃はポッと頬を染め上げた。
絵本に出てくるような王子さまのようなレノンに、梨乃は戸惑いを隠せない。