「私は、ドリアーナ国王子のダニエル=タッカーです。以後お見知りおきを」
「初めまして。梨乃です。本日は楽しんでいってください」
そのやり取りを皮切りに梨乃のもとに挨拶にたくさんの人が訪れ、かわるがわる言葉を交わしていく梨乃。
慌ただしくも落ち着きながら対応している梨乃を、側でクロウが見守る。
そんな梨乃をフロアの隅で見守っていたシド。
「プリンセスだけではなく、フロア全体を警護するんですよ」
「・・・っ、わ、わかってる」
「ったく。まさか、クロウさまが許可するとは」
「うるせぇな」
「まぁ、あの訓練をこなしたのは評価しましょう」
「・・・」
シドは前日まで行われていた特訓を思い出しげんなりと顔を青ざめた。
容赦しない、クロウの言葉通り地獄のような特訓だった。
意地で乗り切ったシドだったが、思い出したくないほどの地獄のような時間だったと思い返してウンザリしていた。
「ですが。今が本番です。何事もなく無事に舞踏会を終えるまで、気を抜くことは許しません」
「・・・もちろん」
護ると決めたのだ。
ここに、いると決めたのは自分自身。