『今週の特集は、このグループ!』
そんな文字が、雑誌のトップに大きく載っている。
「ねえ、マサさん。これ担当したのマサさんなの?」
「紗羅、知ってるだろ?僕はまだ下っ端だから記事の担当はさせてもらえないの。先輩のサポートだよ。
ほら、一番下を見てごらん。」
紗羅が記事の1番最後を見ると、そこには『当社 芸能部 : 佐野 仁 神田 正樹』と書かれている。
「…本当だ。マサさん後ろだ。」
「もっと有名になって早く僕に記事を書かせてくれよ、紗羅。」
紗羅は少し笑った正樹を見た。
その黒縁メガネの下に、昔モデルを志したものの挫折して芸能部の記者になった人の、整った顔と見守るような優しい眼差しがあることを紗羅は知っている。
記事の見出しの続きはこう続いていた。
『メンバーはSara、Mina、Harukiの3人!』
「『3人は人気急上昇中のStarlightのメンバー。デビュー1年目にして多数ヒット曲を…』って、こんなこと書く必要あるの?」
「僕がインタビューしても君達が『忙しいので!』ってあんまり話してくれなかったからだよ。それにしても紗羅…」
デスクについている椅子に座り、クルクル回りながら雑誌を読んでいる紗羅を見て正樹はため息をついた。
長めのまっすぐな黒髪が、回る度にフワフワと宙に浮いた。
「そこ僕のデスクなんだけどなぁ…」
「いいじゃない、マサさんに会いにわざわざここまで来たんだし。芸能部はこの会社の奥の奥だから、大変なんだよ?」
「……そろそろ、事務所に戻ったら?
Starlightのこれからにも関わることなんだから、今のうちに3人で自分達の意見を言い合った方がいいんじゃないか?」
紗羅は突然ピタッと止まった。
その瞳は正樹ではなく正反対の窓の方を向いている。
「…2人の顔を見るのが怖いの。」
紗羅はため息をつき、正樹は俯いた。