そう、少し叫ぶように言うと、持ってきたバッグやらなにやらをもって、お辞儀すると足早に立ち去った。


「あっ、咲愛さん待って」


心雪さんの引き止める声はとどかない。

ただひたすらに前を向いて。


あふれる涙は止まらなくて。

少しイライラしながら涙を拭う。


「もしもし」

『どうした?』

「迎えに…来て」

『今どこ』


亮に電話をかけ、現在地を伝える。

自分の足元に出来る影を見つめる。

ぽたぽたとこぼれ落ちる涙。


「ばーか」


既婚者なら、私に気持たせるなよ。
既婚者なら、私の誘い断れよ。

既婚者なら、気軽に異性を家にいれるな。

なんで、あなたは既婚者なの。