式は順調に進んでいき、誓いのキス、指輪、全てが夢のような時間だった。

けれど、私はいきなり現実に戻された。


「あれ?咲愛ちゃん!」


「かなた…くん」


ブーケを取るためにみんなが集まっているところで、私はもみくちゃにされると困るから少し離れたところで見守っていた。


「…久しぶり…だね」

たどたどしく、私の口から紡がれる言葉は、なんだか頼りなくて泣きそうだった。


「うん。最近お店に来てくれないから寂しかったよ」

「…あー、ごめんね。今禁酒中なの」

「そうなんだ。なんかあったの?」


あなたとの出来事です。なんて言えなくて、私が紡ぐ言葉の半分は嘘なのかもしれないと少し悲しくなった。

「うーん、ちょっとね」

曖昧に微笑むとさよならもいわずに背を向けた。
自分に決心させるように。