「あ!そう!今日は、携帯取りに来たの!」

「あ、俺も、携帯渡しにいこうとしてた!」

「ありがと!」

「あ!!彼方!!」

「あ、心雪!おま、走るなって!」

「ごめんなさーい!あ!えーと、咲愛さん」

「こんばんは。昨日はごめんなさい」


私を見る目とは違う温かな瞳に胸がまたキリリと痛んだ。


「今日も、急がなきゃいけないんでごめんなさい。もう帰りますね?中澤さん、今日は携帯をありがとうございました」


もう、区切りを付けるために"彼方くん"ではなく"中澤さん"と呼んだ。


「あ、名前…」


彼方くんが呟いたけれど、気づかないふりをして、ペコッとおじきをした。

その瞬間眩暈がしたけれど、なんとか踏ん張り、携帯を受け取った。


「じゃあ、さよなら」



もう二度と会わないあなたへ。