「大丈夫だから…」


収まったところで、彼方くんの方を向いた。


「昨日は帰っちゃってごめんね」

「ううん。こっちこそ、いきなり心雪がきてごめんね」


心雪。
その言葉だけでこんなにも心が苦しくなる。


「心雪が、咲愛ちゃんと喋りたかったって。あと、気分を悪くさせちゃったかなって心配してたけど、なんかあった?」

「あ、えーと、仕事思い出しちゃって。てか、心雪さん妊婦さんだったのね」

「あ、うん!今7ヶ月なんだ!」


そう嬉しそうに言う彼方くんの顔を見て胸がキリリと痛んだ。

あぁ、入る隙間なんてないんだ。


「心雪さん大切?」

「え?うん。当たり前じゃん。家族だし」


"当たり前"

その言葉を貰える彼女が羨ましい。