ベンツは私たちを乗せて、大通りを滑るように抜けて行った。

ウィンドウ全開。

爽やかな風がいっぱい入ってくる。

「うっとうしかったら窓閉めていいよ。」

帽子を必死に抑えている私を見ながらシュンキが言った。

「全然。私が帽子を脱げばいいだけだよね。」

そう言って、帽子を脱いだ。

やだ、髪の毛ぺちゃんこだ。

ちゃんとブローしてくるんだった。

「どこ行く?」

シュンキはそんな私の髪も気にしない様子で尋ねた。

「どこでもいいよ。」

「海か山だったらどっち?」

「そうねぇ。」

少し考えた。なんとなく山の緑の空気を胸一杯吸い込みたい気分。

「・・・山かな。」

「そうだね。僕もそう思ってた。」

気が合うんじゃない?!心の中で、ニヤニヤ笑った。

車はUターンして、山の方へ向かう。

トンネルを抜けてS字カーブが続く。

「そういえば、この近くに牧場ってなかったっけ。」

「ああ、あったあった。」

スマホで検索したら、すぐ近くにあることが判明した。

「とりあえず、行ってみる?牧場。」

スマホで確かめながら提案してみた。

「なんだかアラフォー世代がデートする場所ではないけどね。」

はは、って笑いながらもやっぱりこれも「デート」なんだとその箇所を噛みしめる。

二日続けてデートなんて。

ラブラブカップルのすることじゃない?

カイトとハルカに負けてられないわ。

妙に意気込んでる自分がいた。