「とりあえず、大丈夫だよ。彼を信じてあげて。」

そう言いながら、次の言葉を考える。

言っちゃいけないけど、カズエを傷つけるようなことはしてない。

どうやって伝えればいいの?

ユウヤのやつ、

今度会ったらただじゃおかないんだから!

「何がどう大丈夫なのか、ちっともわからないわ。」

カズエは持っていたハンカチをぎゅっと握りしめた。

そりゃそうだ。

何が何だか、さっきの言い方じゃ分かるわけもない。

「旦那の車に乗ってた女は誰なの?」

カズエは震える声で聞いてきた。

「会社の同僚らしいよ。全く変な関係ではないって。」

「どうして会社の同僚を、ゴルフ行く日に乗せてるの?」

「う-、ちょっと頼み事があったみたいで。」

「頼み事?」

「ちょっとね、大事な・・・。アドバイスが欲しかったらしくて、その同僚さんとやらに付き合ってもらってたみたい。」

ええい!

もう面倒くさい!

「もう、正直に話すね。今度の結婚記念日にカズエが喜ぶ贈り物をしたくて、女性の視点でアドバイスがほしくて、会社の同僚の女性に頼んで付いてきてもらったんだって!」

もうどうにでもなれ!

「え・・・?」

「それは内緒にしててくれって言われたけど、どうも何言っても信じてもらえなさそうだったから言っちゃった。ごめん。」

「そうだったの?」

「うん。納得した?」

カズエはじっと一点を見つめて何かを考えているようだった。

そして、ぽつりぽつりと独り言のようにつぶやいた。

「でも。どうして同僚の女と一緒にわざわざ休みの日に行くの?会社帰りだっていいじゃない。」

確かに。

確かに、私もそこは少しひっかかったんだけどね。

だけど、信じるものは救われるって言うじゃない?