「今から俺が言うこと、黙って聞いててくれる?」

私は黙って頷いた。

「ゴルフ行くって言ってたのは、正直に言うと嘘なんだ。」

声が出そうになるのをじっと我慢して頷く。

カズエをチラッと見ると、心配そうな顔で私を見ていた。

「来週、結婚記念日10周年なんだ。だから、何か喜ぶもの贈りたくて、同僚の女友達に付き合ってもらってた。」

思わず、「ほんとにー!?」と叫びたくなって口を押さえた。

なにそれ。

のろけ?

だけど、何だって同僚の女友達?ちょっと怪しくはあるんですけど。

でも、そんなことも言えないまま黙って頷く。

「女友達とは本当に友達でさ。まったくそういう関係じゃないから。ミナミは信じてくれよ。」

ここにきて、信じないわけにもいかない。

「だからさ、この話は結婚記念日まで内緒にしておいてほしいんだ。わかるだろ?」

わからなくはないけど。

問題は、私がカズエにどう伝えればいいかって話なのよ。

「でもさ、間が悪いよな。よりによって車に乗せてるとこカズエに見られちゃうなんてさ。」

私は鼻で笑った。

「信じていいのね?」

そこだけは確認したくて声に出した。

「うん。」

少し声が小さくなったのが気にはなったけど、ユウヤを信じることにした。

「わかった。じゃ、もうこのまま切るね。子供達のお世話よろしく。」

「おう。またな。」

そして、電話を切った。

カズエは尚も心配そうに目を潤ませながら私の言葉を待っていた。