「だけど、浮気だと思ったのはその一回だけなの?」

カズエの旦那、ユウヤのことは、昔からよく知っている。

高校の時からカズエ一筋で、普段は無口だけどカズエの前ではよく笑いよくしゃべった。

クラスでも目立つ方ではなく、どちらかといえば影の薄い感じ。

決してモテるタイプではなかった。

だから、そんな彼が浮気するっていう事がにわかに信じられなかった。

でも、そんなことカズエに露骨に言えるわけもなく。

「そうね、最近は2階でこそこそ電話することやスマホをいじる時間が増えてるかも。」

「それだけ?」

「うん、それだけ。」

「それだけじゃ浮気をしたかどうかの決定打にはならないよ。」

「例えば?」

「浮気相手とのツーショットをスマホから見つけるとか、何回も二人でいるところを目撃するとか。明らかに電話の内容がおかしいとかさ。」

「そんなばれるようなことはしないんじゃない?彼、あれでも結構慎重だから。」

少し落ち着いてきたのか、カズエの表情が柔らかくなってきた。

その証拠にケーキを突っつき始めている。

「やっぱり早く話合った方がいいよ。私的には多分、その車の横に座ってた女性が浮気相手だとは思わない。」

「どうしてそんなことが言えるの?ゴルフ行くって言ってたんだよ?」

「そりゃ、急遽予定が入ることもあるし。その女性がゴルフに行くってことだってあるじゃない?」

カズエは黙ったままケーキを口に入れた。