「そりゃまぁ、仕事だけみたらね。だけど、私生活はひどいもんだから。」

「私生活をそれだけ知ってるっていうミナミ先輩にちょっと妬けちゃうんだけど。」

そう言うと、ハルカは上目づかいで軽くにらんできた。

少し酔っているのか、ハルカの目の周りはほんのり桃色に染まっていた。

こんな顔で見つめられたら、大抵の男はイチコロなんだろうね。

そういうのが全くできない、と言うか持ち合わせてない私にとってはそっちの方が羨ましい。

「ミナミ先輩は本当に立花さんのこと何とも思ってないの?」

思わずワインがせり上がってきてむせる。

「な、何いってんの。あるわけないじゃない。」

あるわけないのに、焦ってるように見られたんじゃないかと焦る。

「あれだけ週末一緒にいるのに、何もないの?」

「ないって。」

「同じ部屋に二人でいるんでしょ?そういう雰囲気になったことも一度もないの?」

「一度もな、・・・。」

そういえば、こないだ、一瞬だけどふざけて「一度やってみる?」とか言われたっけ。

思い出して、言葉に詰まった。

「・・・あるの?」

ハルカの口元がわずかに引きつっていた。

ひょっとして、ハルカ、まじでカイト好きとか??!

「な、ないって!絶対ない。天に誓ってない!」

「天に誓ってない、なんて古い言い方ぁ。」

ハルカはぷっと吹き出した。

あ、よかった、笑ってくれた。

ホッとする。