「お邪魔しまぁす!」

親友さんを差し置いて、お呼びでないカイトはズカズカと上がり込んできた。

心の中で舌打ちをしながら、玄関の扉を静かに閉めた。

リビングまで親友さんの後を歩く。

すごく背が高くて足が長い。

こんな素敵な人が今まで独り身だったなんて信じられない。

カイトの友達にしては、品のいい雰囲気だし。

研究職なんておりこうさんな頭を持ってる上にイケメン。

「お茶でも入れますね。コーヒー、紅茶、緑茶、何でもありますけど何がいいですか?」

「俺、いつものブラックね。それにしても、そんな口調気持ち悪いな。いつもの感じでいいんじゃないの?」

カイトの言葉を無視して、親友さんに笑顔を向けた。

「あ、じゃ、僕もカイトと同じもので。すみません。」

お湯を沸かしている間に、洗面所で軽くメイクする。

あー、やばい。

さっきの顔は忘れてよね。

跳ねた髪をブラシでといて、ピンで留めた。

キッチンに戻ると、私が飲みかけていたコーヒーカップが流しの下に置かれていた。

何これ。

変に気の利いたことするのは、間違いなくカイトだ。

「あ、コーヒーカップ、邪魔だったから、そっちやっといた。」

多分ね。

自分達だけ熱々の飲むのが奴なりに気がひけたんだと思う。

でもそんなカイトに今日は答える余裕はない。悪いけど。