だけど、フライトまでただ待ってるだけ?

例えば、上司がトイレに行ってる間にカイトを呼び出すとか?!

そんなゆっくり話す時間がとれるかどうかもわからないよね。

あー。

無理だ。

どう考えてもこのシチュエーションで、カイトと大事な話をするなんて。

この数週間の私は一体何だったんだろう。

あれだけ悩んで、ようやく出せた自分の答え。

なのに、その答えは届けられないだなんて。

私は中華料理屋に背を向けて、その場をゆっくり離れた。

空港の屋上に飛行機の離発着が見れる展望台がある。

情けない気持ちでその展望台に行った。

キーンという耳をつんざくような飛行機のエンジン音が響いている。

一機、また一機と離陸体勢に入るために滑走路に向かってゆっくりと進んでいた。

あと数時間で、このどこかの飛行機に乗ったカイトは日本から遠く離れた場所へ飛び立っていくんだ。

私の気持ちを残したまま。

フェンスに寄りかかって、ぼんやりと飛び立つ飛行機を眺めた。

・・・また独りぼっちか。

ここまできたら、泣く気にもならない。

逆に笑えてくる。

やっぱり私ってこんな人生なんだわ。

何もかも手遅れで、うまく繋がらない。

一人空回りしながら、時間だけが過ぎていって、気づいたら36になっていた。

本当に大事な人がこんなにもそばにいたことに今更気づくなんて。

ほんとに馬鹿だ。大馬鹿だ。

飛行機の飛び立つ爆音を聞きながら、目をつむった。

音だけが耳の中をぐわんぐわん駆け巡る。

まるで幻想の世界にいるような錯覚に陥る。

このまま、現実ではないどこかへ行ってしまいたい。

目を開けたら、そこに別次元の世界が広がってればいいのに。

広がってるわけもないのに、わずかに期待しながらゆっくりと目を開けた。