あれからずっと考えていた。自分がどうすべきか。

カイトに会いたかったけれど、そういう時に限って会社でも会うこともなかった。

もちろん連絡もない。

私からも連絡はとっていなかった。

カイトとの間には全く持って何も進展はない。

ただ、退職する事だけは上司に伝えていた。

「辞めてどうすんだ?」

上司は冗談だろ?というような顔をして聞いてきた。

「他にやりたいことが見つかったので。」

「やりたいことって?」

「秘密です。」

「おいおい、ふざけるなよ。お前がいなくなった後、俺が一番大変になるんだからさ。」

上司は私の頭をゲンコツする真似をした。

この上司にも本当に長いことお世話になった。

なんとなく感傷的な気持ちになる。

会社自体に未練はないけど、会社にいた人たちとこの先会えなくなることは寂しいと思った。

なんだかんだ言いながらも、上司は私の退職届を受け取ってくれ、翌週には私の後任も配属された。

後任はピチピチの新卒者のかわいい女の子だった。

辞めると言った時には、ショックを隠せなかった三輪カナトも新しい子が来た途端、目の色を変えて生き生きと仕事するったら。

一丁前にその子に仕事のアドバイスなんかしちゃったり。

それなりに先輩してるじゃんなんて、目を細めてカナトを見ていた。

カナトもどうしようもない後輩だなんてずっと思ってたけど、意外と優しくて口の軽い人間でもなかった。

人って、本当にわからないものね。

カナトと新人ちゃんに引き継ぎをこなしていく。一日一日と例の20日が近づいてきていた。

毎日残業で、正直20日どうするかなんて全く考える余裕はなかったけど。