ハルカとは、いつも行きつけの居酒屋で待ち合わせだ。

会社から一緒に行こうと言われたけど、残業があるから先に行っててと伝えた。

残業なんて本当はどうにでもなる。

でも、今は一緒に二人で笑い合ったりすることがつらかった。

18時半に居酒屋の予約を入れてくれてる。

時計を見ると、19時前だった。

そろそろ行かなくちゃね。

ハルカを一人であんな居酒屋で待たせるなんて、先輩としてどうかしてる。

今日は後悔ばかりだ。

ハルカにメールを打った。

『遅くなってごめん。今から会社を出ます。ミナミ』

『大丈夫だよ。慌てないでゆっくり来てね。ハルカ』

ひょっとしたら、噂を流したのはハルカじゃないのかもしれない。

ふとそんな気がしてきた。

今までどんなにかハルカに支えられたかしれないのに、こんな簡単にカナトの言うことを信じるなんて。

そう思ったら、少し元気がわいた。

人間ってなんて都合よくできてるのかしら。

頭の中を少し切り替えただけで、どうにでも変わる。

不安な時は、全てが不安に見えるし、楽しくてしょうがない時は、何を見ても楽しい。

誰かを好きになったら、とことん好きになるし、嫌いだと思えば、それだけで避けたくなる。

そんなくだらないことで悩んでいることがばかばかしくなってきた。

ハルカの大事な話、今日は聞いてあげよう。

そして私の話も。

私の頭の中はまだ漠然としていて整理されていなかったけれど、話し出したらまとまっていくかもしれない。

案外、そういうことって多いのよね。

金曜日ということもあってか、夜の町は賑やかだった。