「お前、今『そんな迷惑な話勝手に二人で決めてんじゃないわよ!』って思っただろうけど、その時は俺ナオトに『約束する』って言ったんだ。そして結局、お前はほんとに独身のまま10年過ぎてって。でも、ミナミの中にはいつもずっとナオトの残像が見え隠れしてた。ドラマを週末見続けてるのも、結局ナオトと一緒に過ごした時間を忘れたくなかったからだろ?」

「そんなことないわ。単にドラマが好きなだけよ。」

そう言うのが精一杯だった。

「そんなお前を見てたら、俺から切り出すことなんてとてもじゃないけどできなかった。だから、親友のシュンキを紹介した。俺にとっては、唯一許せる相手だったってこともあったし、最後のカケでもあったんだ。」

「カケ・・・?」

「怒るかもしれないけど、もし俺の親友のシュンキとミナミがうまくいかなかったら、その時は俺がプロポーズしようと思ってた。」

「誰にプロポーズするの?」

わかってたけど、なぜか聞いていた。

「もちろん、お前に。」

胸がきゅーっと締め付けられる。

何?カイトは何言ってるの?

「だけど、お前はシュンキのこと好きになった。シュンキもお前を大事にしてる。だから、10年後お前を嫁さんにもらうっていうナオトとの約束を果たす必要はなくなった。それもあって、海外赴任に思い切って手を挙げたんだ。」

「どうして、それと海外赴任と関係あるの?別に海外に行かなくたっていいじゃない。」

「見てられないよ。お前とシュンキが仲良くやってんの。」

カイトは、私の目をじっと見つめてきた。

その目は今にも泣きそうな目をしていた。

今まで見たことがないようなカイトの目。

「俺、10年間ずっとお前のこと思ってた。」

「嘘、嘘よ。」

言葉が震えた。

いつもそばにいたカイト。

ナオトの約束を守って、いつも私を支えてくれていたの?

そして、ずっと私のこと思ってくれてただなんて。

そんなこと、そんなおとぎ話みたいなことあるわけない。

「嘘じゃないよ。まぁ、ミナミが気にするなら嘘だと思ってくれててもいいけどさ。」

カイトは寂しそうに笑った。

「今更、一体何なの?」

震える声でソファーの端をぎゅっと掴んだ。