「ナオトが逝っちまってからもう10年経つんだな。」

カイトは、静かに言った。

「俺が海外赴任希望したにはもう一つ理由があるんだ。」

「何?」

「ナオトと約束したことがあるんだ。」

「ナオトと約束?初耳だわ。」

「ミナミには今のタイミングで言うのがベストかどうかはわかんないけど、聞きたい?」

「どうしていつもカイトはそんなもったいぶるのよ。もちろん聞きたいわ。」

カイトの表情が少し緊張したように見えた。

「カイトが亡くなる少し前だったかな。病室で二人で色々話してた。仕事のこと、友達のこと、そしてミナミのこと。」

「私のこと?」

「ナオトは、自分がいなくなった後のミナミのことすごく心配してた。あいつは強がってるけど、結構繊細で寂しがり屋なんだって。」

そう言ってるナオトの顔が浮かんできて、泣きそうになった。

「いつまでも自分のこと引きずって将来結婚できなかったらどうしようって心配してた。」

「嫌だわ、本当に的中してるんだから。」

私は言いながら半分泣いて半分笑った。

「ナオトに、ミナミのこと支えてやってほしいって頼まれた。毎週末ドラマ見てるミナミのそばにいてやってくれって。まぁ俺はナオトみたいにドラマ一緒に見れるほど器用な人間じゃなかったけどさ。」

そうだったの?カイト。

だからいつも週末来てくれてたの?

「で、もう一つナオトに言われた。もし10年先、ミナミが一人だったらお前がミナミをお嫁さんにもらってやってほしいって。」

「な・・・。」

何いってんのよっていつものように言い返そうとしたけど、言葉が詰まって出てこなかった。

そして、カイトの顔を見る勇気もなかった。