「俺、こないだ上司に海外赴任の希望出したんだ。」

それは、カイトの口から出るなんて思いもしない意外な話だった。

「え?そうなの?」

「こう見えても、入社当時は海外希望だったんだぜ。まぁ、色々あってとりあえず日本での下積みが長くなっちゃったけどさ。」

「なんでまた今なの?」

「俺も35過ぎて、40迎えるまでに一皮むけたかったっていうか。このままここで同じ仕事をしてたら、きっとこのままあっという間に40過ぎて、50過ぎて定年になりそうな気がして。少し恐くなったんだ。」

「カイトも自分の人生見つめて恐いって思うんだ。」

「思うさ。このまま一人で生きていくことになるんだったら、もっと外へ出て自分の人生謳歌したいって。何の変哲もない人生が瞬く間に終わっくのに時々恐怖を感じるんだ。年かな。」

「私もしょっちゅう怯えてるわ。」

「ミナミは一人じゃないじゃん。シュンキっていうパートナーに巡り会えたんじゃないの?」

「永遠のパートナーかどうかは別だわ。」

カイトはそんな私を見て苦笑した。

「カイトだって、ハルカがいるじゃない。一人で生きていくなんて言ったら、ハルカに失礼だわ。」

「ハルカちゃんとは・・・多分つながらないような気がする。」

「ハルカじゃないなら、他に誰かいるの?一人で生きてくのが辛いなら、誰か真剣に探しなさいよ。」

私は足を組み直して、お水を飲んだ。

「誰か探せって、ほんと簡単に言うよな。例え見つかったとしても、相手の気持ちもあるしな。繋がることって結構難しいことなんだぞ。」

そして、私の頭をポンポンと叩いて言った。

「ミナミはドキドキできるシュンキと出会えてよかったじゃん。ちーとは俺に感謝しろよ。」

何言ってんだろ、この人は。

私だってまだシュンキと決まったわけじゃないのに。