スマホを見ると、カイトからメールが入っていた。

『残業決定。帰りは21時過ぎになりそう。先家に帰ってて。終わり次第かけつけるよ。カイト』

メールを見て、私はすぐに着がえを済ませ更衣室を出た。

今は会社にいることがとても苦痛だった。

私の噂を知っている色んな人間と、そしてハルカがいるこの場所からすぐに立ち去りたかった。

年を取ったって、傷つくものは傷つく。

耐えられないことは耐えられないのよ。

でも、そんな自分を社内の誰かに見られることはもっと嫌だった。

どうしてこんな風になっちゃうんだろう。

人間不信になりそうだった。

シュンキも、ハルカも信じていたのに。

ビルから外に出て夜空を見上げた。

私の心とは裏腹に、夜空は晴天で雲一つ浮かんでいなかった。

都会の明かりで星こそは見えないけれど、きっと明るい夜空の向こうには無数の星が瞬いてる。

その星すらも、私が見えない誰かの目のように思えて恐くなった。

早く帰ろう。

うつむいたまま、駅に向かった。

飛び乗るように電車に乗ると、スマホのバイブが鳴った。

シュンキからだった。

思わず、電源を消した。

嫌な人間。どう考えても私って腐ってる。

こんなたわいもないことなのに、どうして心を広くもって許すことができないのかしら。

まだ、何も真実すらわからないのに。