「私のことはさておき、さっきは途中になってた話だけどさ。松永さんのどこがお気に召さなかったわけ?」

ハルカはお財布とハンカチと化粧ポーチを入れた小さな手提げバックをぶらぶらと大きく揺らしながらゆっくり歩く。

いっつも笑って明るいくせに、突然、寂しそうな目で空を見上げる。

「ん?わかんない。」

「わかんないの?」

「でも、誰かと付き合いたいんでしょ?」

「付き合いたいよ。このまま一人なんて寂しいもん。」

「じゃ、他に誰か好きな人でもいるの?」

ハルカはふと歩みを止めた。

そして、私の顔を真顔でじっと見つめる。

「もし、いるって言ったら?」

「え?いるの?誰よ。」

「誰だと思う?」

「私の知ってる人???」

少し間があって、ハルカは小さな声で言った。

「ミナミ先輩。」

へ?今なんて言った?

私は目を大きく見開いて、ハルカの顔を凝視した。

え?え?

何馬鹿なこと言ってんの?

大人をからかうんじゃないっての。

「じ、冗談でしょ?そんなしょうもない嘘つかないで。」

私はハルカから視線を外して慌てて歩きだした。

変な汗が額にたまる。異様に早い鼓動。

ハルカは付いてくる気配がない。

恐る恐る振り返った。