「教えてくれるまでここ通さないわよ。」

私はそう言いながら出口を体で塞いだ。

「ほんと、お前ってなんていうかさー。年とって余計にひどくなってんじゃない?」

「何がよ。」

「その頑固なとこ。」

思わず怯んだ。

年取るとだんだん頑固になるっていうよね。

そんなおばさんだけにはなりたくないって思ってたけど、年々頑なな心はより頑なになっていってるのは確かだ。

頑なになることで自分を守ってるところもあるんだけどね。

軽くため息をついた。

「じゃ、もういいよ。ハルカに聞くから。」

やっぱり今日はついてない。

こういうときは押すより引く方がいいのよね。

「なんだよ。冗談じゃん。お前らしくもないな。」

カイトは拍子抜けな様子で、私の顔をのぞき込んだ。

「お前らしくもないなんて、よく言うよ。」

私はカイトから顔を背ける。

「じゃ、言うぞ。」

「うん。」

「お前とシュンキが付き合ってるっていうのはちょっと前から社内で噂になってたんだけど、お前達が来年の春結婚するなんて情報まで流れ出してるらしいぞ。」

目を見開いて、カイトを見上げた。

「何それ。」

「いや、本当の話ならさ、別に全然構わないんだけどさ。噂って、時々先行しちゃうこととかあるだろ?もしそうだったら、ややこしくならないかなと思って。」

「ややこしいわよ。」

どうして?結婚までの噂になっちゃってるの?!

確かにデートしてたところは三輪カナトに見られてたから、噂になることもあろうかと覚悟はしてたけど、来年の春結婚ですって?!

そんなデマ、誰がまき散らすのよ。

もしや、それも三輪カナト??