だけど、こんなミス、新入社員以来だったし、今の私では絶対してはいけないミスだった。

もう!

これも全部、頭をぐちゃぐちゃにしてくれてるシュンキやカイトのせいだわ。

いやいや、彼らのせいではない。

彼らのせいにしてしまう自分が情けなくなった。

「来週も予算資料頼もうと思ってるけど、お前一人で大丈夫か?」

最上の嫌味を言われる。

「大丈夫です。二度とこんなミスしません。」

「次は頼んだぞ。」

上司は書類を机上でトントンと揃えると、また別の会議に出るべく席を立った。

落ち込んだ。

凹んだ。

どんよりとした空気をまとって席に戻る。

そういう時に限って、三輪カナトの奴が隣に座っていた。

「ミナミ先輩がそんなミスするなんて珍しいですね。彼と喧嘩でもしましたか?」

カナトをキッとにらんで小さな声で言った。

「うるさい。」

カナトは、いつになく優しい顔で返してくる。

「でも、忙しい時はいつでも僕を頼って下さいよ。」

「あんたが頼れる人間ならとっくに頼ってるって。」

カナトは私の顔をじっと見すえて、そして目を伏せた。

あ、言い過ぎた?

「・・・ごめん。今度忙しい時は頼らせてもらうわ。せめて、資料のチェックくらいは二人の目でやった方が確実だもんね。」

カナトは視線を上げて子犬のような顔で笑った。

「絶対ですよ。」

「うん、ありがとう。」

正直、今の私の状態では、カナトがいてくれてよかったと思う。

初めてカナトのことを穏やかな気持ちで見つめた。

「どうも、僕Mっぽいです。」

・・・。

そう言ったカナトから無言で視線を外した。

一瞬でもカナトの存在をありがたいと思った私が馬鹿だったわ。