「ミナミ先輩にあれこれ言う前に、私もきちんと決着つけないといけないよね。」

「ほんとだよ。カイトにもきちんと思いを確認して。」

「だからその前に松永さんの話聞こうと思ったのもあるんだ。」

「なんだかんだ言って松永さんのこと気になってるんじゃない?」

私はふふふと笑いながら生中に口をつける。

「だって、あんなにまっすぐな人見たことないんだもん。普通すぐあきらめない?」

「そんなしつこいんだ。だけど、そんなしつこくされたら普通こっちも嫌になるけどね。」

ハルカはおどけた顔で首を傾げた。

「今はフリーなんだし、何でもお試しお試し。」

私は笑った。

「フリーって一見聞こえはいいよね。」

「だって自由だもの。特定の相手がいなきゃ恋愛は。」

「じゃ、ミナミ先輩は自由じゃないんだね。今はシュンキさんがいるから。」

思わず言葉に詰まる。

そういえば、付き合ってたら特定の彼ということで、もっと制約があるもんだよね。

改めてハルカに言われるまで、自分が付き合ってるっていう自覚すらなかったことにショックを受けた。

シュンキのせいにする前に、私自身がまだ煮え切らないだけなのかもしれない。

「ミナミ先輩は、今はシュンキさん以外気になる人はいない?」

「いないわよ。私意外と真面目だし。」

そう言いながら、カイトのことが頭をよぎった。

最近どうしてるんだろう?ハルカともデートしないで。

一友人として気になっただけだけど。

「私たち、結局誰を選ぶのかしらね。」

ハルカはほおづえをついてワイングラスを見つめた。

うまくいきそうな恋は、うまくいきそうでいかないこともある。

30過ぎると、そういう恋が意外と多いんだよね。

だから、その先にある一歩にすごく不安を感じてしまう。

不安を感じてる間に、いつの間にか恋の相手は遠ざかってしまったり。

タイミングが大事なのに、訪れないタイミング。

生中を飲み干して、大きく息を吐いた。