「誰だろ?」

そう言って立ち上がろうとした私を遮って、シュンキが立ち上がる。

「僕が出るよ。」

「え?ごめん。」

シュンキの勢いに負けて、私はそのまま玄関に向かうシュンキを見送った。

耳を澄ませる。

「はい?」

シュンキがドア越しに相手に言った。

「お、俺だけど。」

ドアの向こうでカイトの声がした。

シュンキがドアを少し開けた。

「おっ、シュンキ、来てたのか。いつもタイミング悪いな。」

カイトは相変わらずノー天気な声で言ってる。

シュンキはしばらく黙っていたが、真面目なトーンで言った。

「ほんと、タイミング悪いな。」

「ミナミは?」

「中にいるよ。何?」

「いや、家の前通ったらいい匂いがしたからさ。何か美味しい飯でも作ってんだったら、ちょこっと摘ませてもらおうかって思っただけ。」

「今、取り込んでるから。」

シュンキがカイトにいつになく強めの口調で言った。

「あ、お取り込み中?それはごめん。帰るよ。」

「申し訳ないけど。」

きっと、以前のシュンキなら絶対カイトを中に上げてた。

私も二人の会話を聞きながら、一緒にお昼食べてもいいのになって思ってた。

でも、普通、そんなことしないよね。

彼氏が遊びにきてる部屋に他の男なんか入れない。

きっと私の感覚がどうかしてるんだわ。あまりに近すぎたカイトのせいで常識が麻痺してる。

「じゃ、またな。」

「今日はごめん。またな。」

そして静かにドアが閉まる音がリビングまで響いてきた。

ゆっくりとした足取りでシュンキが戻ってくる。

「カイトだった。」

「うん、そうみたいね。」

「思わず追い返しちゃったけど構わなかったかな。」

少し考えてから答えた。

「もちろん。」