頭を抱える。

こんな場所でぎっくり腰だなんて!

明日の朝までに歩けなかったら救急病院につれていってもらうしかないか。

はぁ。

今日はなんて一日。吉凶混合ってまさにこういうのを言うんだわ。

あいてて・・・。

少しでも体勢を変えようもんなら、痛みが腰から頭まで突き抜ける。

呼吸さえきちんとできない。

きっと陣痛の痛みよりもひどいと思うわ。まぁ陣痛は知らないけどさ。

「ミナミ先輩!」

しばらくすると、扉が開くと同時にハルカの声が部屋中に響いた。

「あった?湿布?」

なんとかハルカの方に首を向けた。

「お前、ほんと間抜けだよなぁ。」

その声は・・・。

ハルカの後に、くすくす笑いながら立ってるのはまさしくカイトだった。

こいつにこういう状態見られるの本当に嫌なんですけど!

カイトはずかずかと部屋に上がってきて、私の前に立った。

「こんな弱々しいミナミ初めて見た。それはそれでいかすんじゃない?」

「何がいかすよ!いてっ!」

叫ぶと腰に響く。

くそー。

「ごめん、ミナミ先輩。湿布買いに行ったら、丁度立花さん達がお酒買いに来てて。」

そうだったのね。はぁ。タイミング悪っ。

「病院行ったほうがよくない?」

カイトの横からシュンキが顔を出した。

シュンキまで!!?

シュンキはカイトと違って心配そうな顔で私を見ていた。

「とりあえず痛み止めだけでも飲んだ方がいいよ。夜寝れないと思うよ。僕の母さんがこないだぎっくり腰やってほんと大変だったから。」

「ありがと。だけど、この状態で動くのもきついし、なんせ外は警報でしょ?車出すのも危ないからとりあえず今日は一日このままじっとしとくよ。」

ハルカが手に持っていた湿布を差し出した。

「下には売ってなかったんだけど、ロビーで宿の人に尋ねたらくれたわ。よかった。」

「ハルカ、なかなか気が利くじゃない?ありがとね。」

「違う違う、ロビーで聞いてくれたのは立花さん。」

カイト?!

「気が利くのはいつだって俺だろが。」

カイトは私のおでこを人差し指で突いた。

まぁ、こういうところは気が利くタイプかもしれないわね。