ナオトの存在は社内でも有名だけど、私とナオトが付き合ってたってことはごく一部の人間しか知らない。

カイトや、同期のほんの一握りの人たち。

その人たちも、腫れ物に触るような感じで、その当時から今に至るまで敢えて触れずにいてくれていた。

これからも、そこだけは秘密でいたいって思ってる。

大事なナオトとの思い出を、くだらない噂の餌食にはしたくないからね。

全てカレーを平らげて、私たちは店を出た。

少々浮き足だっている私たちは周りからどう映ってるんだろう?

少しは羨ましく見られてるんだろうか。

それとも、また恋愛がうまくいかなくなって、また噂話で盛り上がってやれなんて思われてるのかもしれない。

いかんいかん。

うがったものの見方をしてると、ろくなことが起こらないのよね。

せっかく順調な滑り出しなんだから、その勢いに乗っかって幸せな気分に酔いしれないと。

周りの目気にしすぎてたら何も行動起こせないよ。

この年齢で、あんな素敵な彼ができるってだけでも奇跡だわ。

風にあおられて、ハルカのおでこが全開になっている。

「もう、嫌だわ。」

と言いながら慌てておでこを隠して笑っているハルカはとても素敵だった。

カイト、よかったねぇ。

あんたもそろそろ幸せになってもいいんじゃないの?

おでこを隠している手を引きはがして、「はげはげ-」と言って笑ってやった。

「もー。」

ハルカが私を追いかけてくる。

いつまでもこんな風にしてたいな。

でもきっとハルカが結婚して、私も結婚したら、こんなことはできなくなるんだろう。

それもまたよし、か。