あのニュース以来、初めての依頼人。
「私の彼、浮気してたんです!あり得ない。この際、記憶も全部リセットしてもらおうかと思って。そういう噂を聞いて来ました。」
「店主の空野です。料金発生しますが本当によろしいですか?」
「いいですよ。あんな奴を忘れる事が出来るなら。」
空野さんは淡々と記憶の消し方を説明している。
依頼人が店から出て行くと、空野さんは全く意識をしていないようだったが、不意に呟いた。
「自分勝手だな。自分だけ相手を忘れて簡単にお別れ。携帯で一言メールでも打てば終わらせられる。そんな簡単な恋愛なら、記憶を消したくなかった…。」
空野さんは僕がいるのを忘れてただ、後悔していた。
商売でも、空野さんの本心とは違う。こんな事をしたくないと思ってる。
少し、僕は安心したんだ。空野にだって感情はある。当たり前だけど、実感出来て、嬉しかった。
何で僕はこんなに、空野さんの事を気にしているのか?
新たな疑問を胸に、また今日も空野さんを手伝っている…
to be continued