「どうしよう………」


前にいる男達を前に、あたしは成す術なく立ち尽くしていた。


ーガンッ!!


一人の男があたしの両手首掴み、壁に押し付けた。


「…嫌っ……痛い……」


締め付けられる手首の痛みが、さらに恐怖を生む。恐い…どうなっちゃうんだろう……。恐いよ…。


涙が滲んで、何よりも怖くて、相手の顔が見れない。


「…泣いてんの?可愛い〜…」


ヘラヘラと笑いながらあたしをジロジロと見てくる。獲物を捕らえた獣のような瞳。無意識のうちに体が震える。


このままじゃ…あたし…。本当に襲われちゃうんじゃ…。


「……おい」


もう駄目だ。そう思い始めていた時、地を這うような低い声が聞こえた。


その瞬間、あたしを押さえつけていた重みが消えて、ベリッと男が引き剥がされた。


ードカッ!!


「ぐふっ…」


な、なに!?何が起きたの!?


状況を把握しようと頭をフル回転させていると、あたしのすぐ目の前にいた男が、今度は地面に転がっていた。


「…えっ…………?」


驚いて身を固める。あたしの目の前には、誰かの背中があった。


広くて、大きな背中……。


さっきまであんなに怖くてたまらなかったのに、何故かその背中にとても安心した。



「死にたくなかったら失せろ…」


顔は見えないけれど、この人の声は低くて、周りを圧倒する力を持っていた。あたしを襲おうとしていた男達が後ずさる。


「おい…こいつ………。狼牙の元総長じゃねーかよ…」

「やべぇって…う、うわぁぁっ!!」


一人が悲鳴を上げて逃げ出すと、他の男達も一緒に逃げ出した。


一難が去ると、あたしはヘナヘナと地面に座り込んだ。


「……………………」


恐かった…何あれ……。あたしもう少しで…襲われてた。