あたしは…そこまでして生きたいなんて思わない。
だけど……豊さんや喜一お兄ちゃんとお別れになるのは悲しい。
でもそれ以上に、あたしがいなくなる事で二人の負担が無くなるなら…そう思っている自分がいる。
普通なら、生きたいとか、死にたくないって思うんだと思う。
…この調子じゃ明日もこの話し合いになるだろう。あたしはある決心をしていた。
布団から出て少し大きめのリュックに服を詰める。そう、必要最低限の荷物。
私服に着替え、リュックを背負った。
―ガラガラガラ。
そっと窓を開けると、10月中旬、肌寒い風が、あたしの髪を撫でる。
「…さよなら…豊さん、喜一お兄ちゃん……」
もう一度部屋を見渡して、この部屋で、家で過ごした思い出を振り返る。
優しい人たち。失ってしまった家族の愛を注いでくれた大好きな人たち。
でも、今のあたしには、それがすごく辛い。
あたしは思いを絶ちきるように家を出た。机には一枚の書き置きを残してある。
『今まで、ありがとうございました』
いわゆる家出というやつなのだけれど…。
…そして今に至る。