「……律、昔から負けず嫌いだったもんね。球技大会で、キョウの挑発に乗ってサッカーしちゃうくらいだもん」


涙を拭いながら少し明るい口調で言うと、律は「あの時はちょっと無理したな」と言って笑った。


「でも、そうやって普通に小夜やキョウと関わりたい気持ちもやっぱりあったんだ。転校してきてふたりがいるのを見た時、本当はすげぇ嬉しかった。遊園地行った時も、病気のこと忘れるくらい楽しんでたよ」


そこまで言うと、ふいに律の表情に影が落ちる。


「でもあの日、トイレを出る時に小夜が男に絡まれてるの見て、早く助けなきゃって思ったのに、急に足が出なくなった」


初めて知ったあの日の真実に、ズキリと胸が痛む。


「そう、だったの?」

「あの日はたぶん、薬飲む時間が微妙にズレたから……。地面に張り付いたみたいにさ、本当に動かせないんだよ。焦ると余計に」


今日のことも思い返すと、焦るほど動けないというのはよくわかる気がした。

えっちゃんが言っていたように、精神状態も深く関わるみたいだ。