よかった、少しは体調が良くなってきたみたい。

それでも起き上がらないまま、「越から聞いた?」と言う彼。

私はベッドに近付きながら、こくりと頷いた。


「うん。病気のことも、手紙のことも……」

「そっか……」


律は遠くを眺めるように天井を見つめて、ゆっくり話し始める。


「それを書いてて、本当に病気のことを打ち明けていいのか?って迷い始めたんだ。どうせ離れるって決めたんなら、何も言わない方が小夜に気を遣わせなくて済むだろうと思った」

「それで、えっちゃんのふりをして……?」


小さく頷いた彼は、少しだけ眉根を寄せて呟く。


「“小夜のことを嫌いになった”って言えば、簡単に終わりにできたかもしれないけど……そんなこと書けなかった。嫌いだなんて、嘘でも……」


また目頭が熱くなる。

唇を噛みしめて必死に涙を堪えるけど、何の役にも立たなかった。


「でも結局、そんなの自分のエゴだったんだよ。いずれ小夜やキョウに頼りっきりになると思うと情けなくて、ただ強がってただけだ」


律はそう吐き捨てたけど、その気持ちもよくわかる。