まだ遊んでいる子供も結構いる中、ふたりでゆっくり砂浜を歩く。


「覚えてる? この海」


私は自然と律に話し掛けていた。

穏やかな波の音を聞いていると、緊張も少しだけ和らいでくる。


「律が引っ越す前、皆で来たの。バーベキューやって、砂浜でちょっと遊んで……」


サンダルから覗く足の指に、温かい砂がつく。

そのざらつく感覚も懐かしく思いながら、私はあるところで立ち止まった。

律がプロポーズしてくれた、あの場所だ。


「あの時言ってくれた言葉、私の中では今も消えてないよ」


隣を見上げると、彼の瞳も海から私へと焦点を移した。

その綺麗ではかなげな表情を、まっすぐ見つめる。


「律のこと……あの頃からずっと、ずっと大好きだから」


──揺らがない、この想い。

もっといい伝え方があるはずなのに、大好きっていう言葉しか見つからない。

まぶたも、胸の中も熱くて、抑えていたモノが今にも溢れそう。


どうか届いてほしいと、ほんのわずかな希望に懸けて、律を見つめ続ける。

すると、彼の目線はゆっくり砂浜へと落ちていった。