自分ちっちゃいなーと呆れていると、私の手からカップがするりと抜き取られる。

キャラメルラテが入ったそれの行方を見やると、彼の口にストローがくわえられた。

二度目の間接キスにドキッとする。


「これでおあいこ」


カップを返してきた彼は、頬杖をついてにこりと可愛らしく微笑んだ。

そ、その可愛さ……なんか反則ー!

私はきっと赤くなっているだろう顔を俯かせて、縮こまった。


……こうやってキュンとさせられるたびに、切なさも募る。

もうすぐ、この時間が終わってしまうかもしれないから。

胸が締めつけられながらも、それは表面に出さずに、ひと時のデート気分を味わうのだった。



時間になりバスに乗り込むと、窓の外の景色はどんどん街から遠ざかっていく。

次第に海に近付いていることに、律ももう気が付いているだろう。

自然と口数が少なくなり、海岸沿いの道路にあるバス停に着くと、ふたりで静かに降り立った。


すでに午後4時になろうかという海は、西に傾いた太陽の日差しを浴びてキラキラと輝いている。

潮風に髪をなびかせながら、引き寄せられるように海へ向かった。