バスの発車時刻まで、カフェに入って一息ついた。

周りの女の子達は、ちらちらと律を見て頬を染めている。

そして、私の存在に気付くと、あからさまに落胆するのがわかった。

私は彼女みたいに見られているのか。

本当は、私もあの子達と立場は同じなんだけどな……。


「どうした?」


小さなテーブルに向かい合って座る、律の手元をなんとなく眺めていた私は、顔を覗き込まれてはっとした。

そんな私に、彼は自分のコーヒーのカップを差し出して、小悪魔な笑みを浮かべる。


「間接キス、する?」


こっ、この人……サニーサイドの時みたいに、私が動揺するだろうと思っておもしろがってるんだ、絶対!

なんだかムッとした私は、彼の手からカップを奪い、思いきってストローに口をつけた。

ごくりと苦いブラックコーヒーを喉に流し込むと、目を点にしている律にカップを返す。


「ごちそうさま」


棒読みで言って、ふいっと顔を逸らした。

私だって、間接キスくらいなんてことないんだから!

……って、よくわからない意地を張ってどーするよ……。