当時、律が住んでいたマンションは、この公園のすぐ裏手にあって、私がケガしたのを見た彼はすぐに駆けていった。

そして、持ってきてくれたのは、可愛いカエルのイラストが描かれた絆創膏。

痛くて泣いていた私は、それをぺたっと貼られて、『これで大丈夫』って笑う律を見たら、すぐに泣き止んだんだ。


「……こんなこと、キョウだって覚えてないだろうけど、私にとっては全部宝物だよ」


神妙な顔で、誰もいないブランコを眺める律に、私はセンチメンタルな気分で微笑みかけた。

案の定、彼は黙ったままだけど。

どんな些細なことでも、私にとってはかけがえのない思い出なんだと伝えたかったんだ。


今、律はどんな気持ちで、何を考えているんだろう。

覚えている? 覚えていない?

そうやって、どうしても心の中で問い掛けてしまうけど、本題を切り出すのは海に行ってからにしよう……。



それから、私はあえて昔のことには触れず、たわいもない話題ばかり口にしていた。

海に行くまでは、ふたりきりの時間を楽しみたくて。

それを察知したのかはわからないけど、律も明るく話に乗ってきてくれていた。