首をかしげる私にもう一度顔を向けた律は、特に今の発言には触れずに話を変える。


「今日はどこかへ行くの?」

「あ、うん……! 着くまでのお楽しみ」


今日のプランを任されている私は、ニコッと笑って答えた。

そんなに楽しい場所ではないけどね……私は緊張しまくってるし。

まったく予想がついていない様子の律は、「どこだ?」と首をひねっていた。


海までは、駅前から出ているバスを使った方が都合が良い。

さっそくそこへ向かおうと、私達はベンチから腰を上げた。

だいぶ夏らしくなった日差しの下、ふたりで並んで芝生の周りの道を歩く。

暑いせいか、公園内にはあまり人がいない。


「……この公園、懐かしいな」


昔から変わらない、古びた遊具を眺めながら呟いた。

ここで遊んだ幼い頃の記憶が、じわじわと蘇ってくる。

私を見下ろす律に、砂場の向こうにあるブランコを指差してみせる。


「あのブランコで、キョウのマネして変な乗り方してたら、私が落ちてケガしちゃって。そしたら、律はすぐに家から絆創膏を持ってきて、手当てしてくれた」