樹は一足先に弁当を食べ終わると、辺りをぼんやりと見渡していた。

 その間、何度か他の人に目撃され、指差す人もいたが、樹は涼しい顔をしている。

 わたしは昼食を食べ終わり、お弁当を片付け立ち上がろうとする。

 彼は再びわたしの手をつかんだ。

「まだ時間があるよ」

「昼休み中、一緒に過ごすつもりなの?」

 わたしは顔を引きつらせながら、問いかけた。

「それもいいかもね」

 彼は愉快そうに笑う。

 きっとその行動に意味などない。

 彼は自由気ままに行動を起こし、言葉を綴っているのだろう。そんな彼を理解しようとするのが間違っている気もする。

 もっと彼にも新しい友人関係ができれば、少しは変わってくれるんだろうか。

 その誘いも彼にはいくつかあったのだ。

「樹は部活、入らないの?」

「また、その話か。興味ないよ」

「でも、もったいなくない?」

「もったいなくない」