嫌味を言うし、わたしの事を嫌いなのは分かっている。

でも、彼はたまに優しくしてくれる。それに勉強ができるといっても、それに見合う努力もしている。

一緒に暮しているので、彼の部屋の電気が消えるのが一番遅い事も知っている。

そうしたことが積み重なり、十年近く敵意を浴びせられても、そこまで樹を嫌いにはなれない。

 その時、ひそひそと人の話し声が聞こえた。顔をあげると、何人かがわたしと樹の顔を見比べていた。

 姉弟で一緒にご飯をたべるのはありえないとでも言われているのだろう。わたしが道化となって。

 今の状況を改めて理解し、急に恥ずかしくなってきた。

「やっぱり教室に戻るよ」

 立ち上がったわたしの手をご丁寧につかむ。視線が鋭くなったので、何人かには見えていたのだと思う。

「そんなに俺と一緒に食べるのが嫌なら毎日お弁当を奪ってあげるよ」

 わたしは強制的にその場に座らされることになる。

 満足そうににこりと微笑んだ彼を見て、やっぱり悪魔だと思った。