わたしは彼の隣に座るとお弁当箱を受け取った。リボンをかたちどった藍色の紐をとき、白いプラステックの容器を取り出した。

 蓋をあけると、わたしの好きなおかずがてんこ盛りになっている。

「正直な顔」

 彼は思わず顔をにやけさせたわたしを見ると、ぷっと噴出した。

「別に嫌々食べるよりいいでしょう」

「いいんじゃない?」

 どこか馬鹿にしたような冷めた声に反発を覚えながら、箸を入れる。

 そのとき、わたしの隣にウーロン茶の紙パックがぽんと置かれる。それはわたしがいつも昼に飲むお茶だ。

「これ」

「姉さんの」

「ありがとう。お金は払うね」

「いいよ。それくらい」

 わたしはおにぎりを一つ食べ終わると、それに手を伸ばす。

 さっきまでわたしの心を覆っていた樹に対する敵意があっという間に崩れ去り、これではいけないと自制する始末だ。

 いじわるな彼はたまにこうした、優しさを覗かせる。

 わたしはストローをパッケージに差し込んだ。

 少し日に焼けた肌にうっすらとクマが出来ているのに気付いた。