高校入学後に一緒に昼食を食べるのはこれで三度目だ。毎日の登下校に比べると可愛いものだとは思う。

 彼の申し出に応じるわたしも相当なものだ。

だが、彼に完全なノーを突きつけられないのは、今の生意気な彼に何気なく昔の面影を思い出しているのかもしれないと思った。

彼があのまま大人になっていたらどれだけ素直な子になっていたんだろう。

普通に友達のように彼と話せたのかもしれないと、ありえない未来を脳裏に思い描くこともあるためだ。

「いつも板橋先輩と食べているんだよね。一緒に連れて来たらよかったのに」

「誘ったけど、断られたの」

「まあ、たまにはいいんじゃない」

「あなたが言う言葉でもないけどね」

 樹と同じ言葉は利香に言われた。

 彼女は水入らずで、食べてこいの一点張りだったのだ。

 彼女は友人が多いため、わたしがいなかったとしても受け入れてくれる友人も少なくないだろう。亜子とも利香つながりで知り合ったのだ。