彼女はそうあっさりと告げる。その言葉にわたしの心拍数が速くなる。

一学期にわたしと樹の関係を聞かれた時から、こうなることは予想していたのだと思う。

だが、樹と関係が近くなったことが、わたしに再びショックを与えていた。

 樹は全く表情を変えなかった。そして、目線を足元に落とす。

「俺は」

「まさかお姉さんのことが好きだなんて言わないですよね」

 樹の言葉を打ち消すように、恵美が微笑む。

 樹は驚いたように少女を見る。

「お姉さんだもん。恋愛対象にはならないでしょう」

「俺と千波は血がつながっていないから、厳密には姉じゃないよ」

 彼の言葉はわたしの希望が入っていたためか苦しげに感じられたのだ。

「知っていますよ。でも、この前、先輩のお姉さんが言っていたんですよ。樹さんはただの弟で、恋愛対象にはならないと」

 恵美は玩具をみつけた子供のように愉快そうに笑う。

 この前なんて定義はあいまいだ。わたしからすると、花火の前後で樹への気持ちは大きく変わった。

 わたしは樹が好きだ。