わたしはその花壇のほうに歩いていき、校舎から花壇を覗きこんだ。

 そして、そこに立っている生徒を見て、ドキリとする。

 そこにいたのは恵美と樹だったのだ。正確には樹はわたしに背を向けていて、恵美と樹が向かい合う形で立っていたのだ。

「できれば手短にすませてほしいんだけど」

 樹は困ったような笑みを浮かべると、髪の毛をかきあげる。

「もう少し待ってほしいの」

「何で?」

 その答えを模索するかのように、辺りを見渡した恵美の視線がわたしとぶつかる。


そして、彼女は一瞬だけ口元を歪め、一学期に見せたような、勝ち誇った笑みを浮かべていた。

 わたしは朝の笑みを思い出し、左胸に手を当て後退した。

 恵美の視線がわたしから離れ、樹を見る。その表情には勝ち誇った表情は微塵もない。

「わたし、藤宮君のことが好きなんです」