わたしは唇を尖らせた。

 わたしは自分の気持ちを伝えられないのにも関わらず、樹もわたしと同じ気持ちでいてくれて、いつか気持ちを伝えてくれるのではないかと期待していたのだ。

 だが、今日の今日までわたしの願う言葉が降ってくることはなかった。

「文化祭っていつもどうしている?」

「昨年は利香と一緒に適当に出店を回ったかな」

 樹と日和も遊びに来て、そのときはわたしも二人を案内していた。

 今年は去年と同じく研究発表を張り出すくらいで、そんなに人手も必要ないのは確定していた。

「今年は姉さんと一緒に回ろうかな」

「いいけど、友達と回れば? 木崎くんとか?」

「あいつはあまり細かいことは気にしないから」

 確かに樹のシスコン振りを知っていて、樹と仲の良い友人関係を続けているくらいだ。

 わたしと文化祭を回るといえば、ほほえましいと見送ってくれそうだ。


 学校の近くに来ると、樹から悪戯っぽい笑みが消え、普通の優等生としての彼の表情が見え隠れし始める。