わたしと樹の関係はこれといって大きな変化はなく、夏休み明けと同じような中途半端な関係を築いていた。

「自分で起きないといけないのは分かるけど、もう少し早く起こしてほしかった」

「もっと早く部屋に来たんだけど、千波の寝顔を見ていたら起こせなくなってさ」
「何分くらいいたの?」

「五分くらい」

「それだけあったら髪の毛も直せたし、日和にも見られなくて済んだのに」

「見られたって、俺が千波の部屋にいるのを? そんなのよくあるだと思うけど」

 キスしてほしいと思っていた顔とは言えず、わたしは唇を結んだ。

「五分も何をしていたの?」

「さあね」

 樹は悪戯っぽく笑う。

 きっと何もせずにわたしの寝顔を見ていたんだろう。

 そんな気がしたが、含みのある言い方をされると、顔がかっかと赤くなる。

「何もしてないよ。見ていただけだから」

「わかっているよ。本当に物好きだよね」